1 みえないものをみる
鍼灸師向けー『難経」で治療するにはー
みえないものをみる。
それが伝統的な鍼灸しんきゅう医学の見方や考え方です。
異なるもの同士の共通点に気付き本質を見抜く。
隠れた意味や価値を見出す。
先をよんで未来をイメージする。
関係性に注目して全体のために働きかける。
人の心を汲み、柔軟に対応する優しさ。
言葉にすれば、きれいごとのように聞こえるかもしれません。
物事をどのようにみてどうとらえるかです。
だから「美意識」によって気付くことに違いが生まれ
行動が変わってきます。
根底に思想や感性といった「美意識」があり
その上に規律や法則が築かれる。
その法則が幹となって
さまざまな学術や方法が枝のように伸びていく。
目に見えるのは上にある法則と方法のみ
見えるものだけです。
樹木でいえば枝葉や幹の部分。
複雑に分岐した枝葉だけを見ても
ややこしくて訳がわからない。
すると鍼はりは
「オカルトチックであやしい」
「胡散臭いこじつけだ」となってしまう。
いやいや、それは誤解でしかなく
もっともな理屈が根底に隠れています。
だから根にたどり着くことが求められます。
そこに面白さがあります。
そもそも「なぜ鍼で治療が可能なのか」という不思議。
「鍼治療とは何をどうしているのか」という謎。
その答えも『難なん経ぎょう』に隠れていました。
東洋の視点から捉えて
ルーツや根拠を解明することこそ本来の科学化でしょう。